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*馳走 -2-


続きからどうぞ





「秀吉への義を破り、豊臣から政権を奪い取るわしが憎かろう? 
この世でもっとも忌み嫌う男に弄ばれて、これ以上の辱めはあるまい」


「この姿、お主を信じてついて来た者達が見たらどう思うかのぅ」


悪意のこもった声で畳み掛けるように囁けば、三成は鋭い殺気を宿した視線で家康を突き刺した。
しかし、次の瞬間、切れ長の目を縁取る睫が悩ましげに震えだし、唇が悲鳴の形に割れた。


「ぁっ!」


三成は甲高い声を次々に張りあげながら、ギチギチと立てて体をのたうたせる。


「薬が効いてきおったか」


張子に塗り込められた掻痒性のある媚薬が三成の秘肉に浸透したのだ。
猛烈な痒みと燃えるような疼きが肉筒を襲っているだろう。
 


「ぁ! あ、熱い! 痒い! あぁっ!」


張子を引っこ抜けば、三成は床板が抜けんばかりに暴れ、短い喘ぎを断続的に迸る。
死に損ないの虫のように足掻く姿に、家康は
……そろそろじゃな。
好色な笑みを口元に滲ませて、燃え滾る欲望を、ヒクヒクと物欲しげに収縮する鮭肉色の秘肉へあてがった。


「何が欲しいか申してみよ。素直に申せばくれてやろう」


三成の身体が欲しいものはただ一つ。
だが、それを求めることは、男として、西軍の事実上の総大将として許されぬことだ。
口にすれば、矜持は小枝の如くへし折れ、誇りは泥にまみれ、三成は完全敗北に打ち痺れるだろう。
泣き震えるその姿は家康にとって最高の馳走となる。


「掻痒を治めたいのじゃろう。それともこのまま発狂するまで身を焼かれ続けたいのか?」

「この卑怯者が! ……っ、誰が、貴様を……ああ! ぁう! ……ああ、ひ」


罵声は次第に嗚咽へ変わっていった。
三成は戦慄く唇を噛みしめていたが、やがて、口を小さく開き、強張る舌を見せた。


「…………」

「何じゃ、三成。 聞こえぬよ。いつものように、はっきり申してみよ」


三成は微かに唇を動かすが、その声は家康の鼓膜には届かない。


「き、きさまの……ん……あ……」


家康のよくみのった頬が上気した。
不屈を誇る男の屈服。
ようやく、嗜虐の悦びの頂点に立てるのだ。
震える唇が家康の望む言葉を紡ぎ出すものと、家康は期待して見守った。


だが


「貴様の……首だ……」


吐き出された言葉に家康の眉がぴくりと引き攣った。
愉悦に濡れる三成の瞳には針めいた鋭い殺気と滾る憎悪が刻まれていた。
望むものを得られず、家康はギリっと奥歯を食いしばったが、次の瞬間には口の端に深い笑みを刻んでいた。
尖った顎を掴むと、残酷さと愛しさをこめた声でそっと……


「それでこそ、我が獲物じゃ……」









-終-
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