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孤独な視線

・青→→→黒子。
・青峰が黒子を引きずってるだけのお話です。






夕陽の残光を浴びて赤く染まり上がった昇降口で、青峰は黒子を見つけた。
青峰が声を掛けるよりも早く、黒子は顔を上げた。
目が合って、口角を吊り上げて笑ってやれば、黒子は口元に微笑を添えた。
あんな存在感のない奴をよく見つけられるな、すげーなと、
仲間から感嘆の声があがるけど、相棒なのだから当然だ。




バッシュの冴えた音とけたたましい笛の音が飛び交う体育館で
青峰は栄達スピードのパスを見事にキャッチした。
エースを誇る青峰の跳躍力に敵味方問わず目を瞠る中、
青峰は豪快にダンクを決めた。つま先を翻せば、澄んだ瞳と視線が絡む。
腹の底にまで響き渡る賞賛の声を浴びながら、汗玉の浮かぶ腕を伸ばすのと
小さな拳と青峰の拳がこつんと合わさった。
 




部活をさぼって屋上へ向かう途中、青峰は黒子と擦れ違った。
相変わらず無表情だったが、瞳の底に存在する悲哀と焦燥の色を青峰は見逃さなかった。
悲しみを湛えた瞳。その対象は青峰なのか、それとも無力な自分へだろうか。
青峰は校庭に佇む裸の木々に視線を投げると、そのままその場を後にした。






あくびをしながら桜散る歩道を進んでいると、
ふと視界の端にファーストフード店が映って、足を止めた。
窓際の席で、本を片手にストローを銜えているのはかつての相棒だ。
相変わらずここのシェイクを飲んでいるのか、またつまらなさそうな本を読んでいるな
そんなことを考えていたら懐かしさと愛おしさがふつふつと湧いてきた。


……テツ。


鼻筋の通った横顔をじっと見据えていると、ふいに黒子が顔を上げた。
心臓が深い脈動を打った。心音が早まる中、青峰は目を細めてその瞬間が訪れるのを待った。
だが。
赤髪のデカイ男が黒子の向かい側の椅子に座り、
黒子は食料を大量に買い込んだ赤髪と雑談を始めた。
虚しさと怒りが胃の底から湧き出して、青峰は舌を鳴らすとその場から立ち去った。

 


写真集を買いに行こうと、つややかな新緑の茂る並木道を抜けた。
轟音が響いて、何事だろうと青峰は視線を道路の向こう側にあるコートへ走らせた。
赤髪の男がダンクを決めたようだ。
青峰は眉間に深い皺を刻んで、赤髪をねめつけた。
柔らかい弧で描かれた目が赤髪を誇らしげに見つめていたからだ。

 

……くそっ。
 

 

無性に悔しかった。
捨てたのは自分だ。身勝手なのは分かっている。
けれど。

 

黒子と赤髪が同時に腕を伸ばすと、二つの拳がこつんとぶつかった。
あの澄んだ瞳に映っているのは青峰ではない。

 

重なっていた視線。
だが、今はもう合わない。
あいつは他の奴を見ているから。









-End-

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