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憎と辱 -4-

つづきからどうぞ





 い草の香りに、三成の意識は微睡の底から現実へと引き戻された。どうやら、眠ってしまっていたらしい。頬に貼り付く髪に煩わしさを抱いたが、三成に払う気力はなかった。全身が疲労しきり、気怠い。もう少し、眠っていたい。


「そろそろ離れてくれないかねェ。僕ゥ」


からかうような声に嫌々瞼を上げると、左眉に古傷を穿った男が肩頬を吊り上げていた。一癖ありげな笑みを示す男は誰なのか、ここはどこなのか、朦朧とした頭で思案の糸を張り巡らせる。そして、己の醜態を思い出して、頬が上気した。


「き、貴様っ! 離れろ……あぐ」


腕を突っぱねた三成だったが、腰の異物感に顔を歪めた。柳生の男根が秘部に入ったままだ。


「離れろって酷いなァ。気をやった後、しがみついて離さなかったのは僕のほうだっていうのにねェ」


揶揄を三成の耳に注ぎながら柳生は男根をゆっくりと抜き取った。
秘部から精液がとろとろと溢れて、尻の狭間を汚してゆく。生々しい感触に怒りが胸底から湧き上がってきた。


「貴様……よくも俺を……許さぬぞ」

「許さぬぞ。って、僕だって楽しんでたわけだァ。怒ることないだろォ」


怒り滾る三成に、柳生は冷え冷えとした視線を向けた。だが、すぐに視線を枕元へ移した。柳生は腕を伸ばして煙管を手にすると、寝っころがったまま煙管の頭に煙草の葉を詰めて火をつけ、美味そうに一服し始める。辺りに漂うい草の香りは、本来ならば鎮静効果のあるものだが、今の三成とって怒気を増幅させる代物だった。


………この屈辱、必ず報う。
拳を握ると、爪が皮膚を突き破った。


「んー、その調子なら、もう一回戦いけそうだねェ」


裸の胸を撫でられ、悪寒と悦が同時に駆け巡った。これ以上、人の矜持を踏みつぶされてたまるものか。


「俺に触るなっ! 外道が!」

「僕のお願いは聞いてやれないなァ。おじさん、僕のことが……」


柳生は非常識な力で三成を引き寄せると、煙草の匂いが残る口元を三成の耳たぶへ寄せて


「嫌いだからねェ」


悪意を秘めた声に、三成の背筋に戦慄が駆け巡った。









-終-
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